おまえは何を言っているんだという感じのタイトルですが、お暇な方はお付き合いください。


【目次】
1. 送りバント
 1.1. 統計上は“損をする”戦術
 1.2. 前提が変われば価値も変わる
2. 伊勢改二の使い方 〜19春E5-2甲ラスダンより〜
 2.1. 連撃伊勢 vs. 制空伊勢
 2.2. 勝利提督インタビュー
3. おわりに



1. 送りバント

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(注:私は野球ファンですが、この記事での野球は単なる前置きに過ぎないので、あまり厳密な話はしません。詳しくは各自ググったり、最近出版された入門書を読んだりしてください)

 1.1. 統計上は“損をする”戦術

「送りバント」とは野球の戦術のひとつです。
わざと弱い打球を転がして、自分がアウトになる代わりにランナーを次の塁に進めるというものです。
特に日本では少年野球からプロ野球まで一般的に使われています。

ところが、近年のプロ野球では
統計的に見ると、送りバントはどちらかといえば損をする戦術である
という結論が導かれています。

一般的に使われている戦術が「」とされるのは変な気もしますが、何故そのように言われるのでしょうか。
これを理解するためのポイントは、下線を引いた部分にあります。1つずつ見ていきましょう。


・プロ野球では
プロ野球では、1シーズン=およそ140〜160という多数の試合を戦い、最も勝率の高いチームが優勝となります。
一発勝負のトーナメントで最大5〜6試合の高校野球 (甲子園) とか、リーグ戦で10〜15試合程度の大学野球とは大きく異なります。


・統計的に見ると
プロ野球チームは、契約している各選手の働きに応じて給料 (年俸) を支払います。
選手の給料は高額ですし、資金には限りがあるので無駄遣いは禁物。
各選手に適切な額を支払うためにも、「働き」はなるべく客観的に評価したいところです。

どうすれば「働き」を客観的に評価できるのか。
例えば、試合で選手が行ったプレーを統計的に分析する、というアイデアがあります。
これはセイバーメトリクスと呼ばれています。

「働き」とは、セイバーメトリクスでは「どれだけチームの勝利に貢献したか」を意味します。
なぜなら、プロ野球は最も勝率の高いチームが優勝というルールであり、優勝するためにはたくさん試合に勝つことが必要だからです。
さらに言えば、試合は相手よりも多く得点したチームが勝ちというルールなので、「働き」とは「どれだけ得点に貢献したか」と解釈することができます。


・どちらかといえば損をする
セイバーメトリクスの考え方を進めていくと「ひとつひとつのプレーの価値を、得点に換算して表現する」という手法にたどり着きます。
つまり「ヒットを打った」は何点分、「三振した」はマイナス何点分、などと基準を決めることができ、その基準を選手の1年間のプレーに全て適用すれば「働き」を計算することができるわけです。

この基準を「得点価値」と呼びます。

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(ここは読み飛ばしても構いません。気になる人用)

「得点に換算する」方法を簡単に説明します。

1)
野球の「局面」は、アウトの数 (0、1、2) とランナー状況 (なし、1塁、2塁、3塁、1・2塁、1・3塁、2・3塁、満塁) の組み合わせで、計24種類あると考える。
2)
ある期間 (例えば1年間) に行われた全ての試合を調べれば、24種類の局面それぞれについて「その局面から3アウトで攻撃が終わるまでに平均何点入ったか」を計算することができる。
これを得点期待値という。
3)
「ヒットを打つ」「三振する」などのプレーで局面が変化したら、
(プレー後の局面の得点期待値) - (プレー前の局面の得点期待値)
を計算して、それを「プレーの価値」とする。
例えば、「0アウト・ランナーなしの局面でヒットを打ち、ランナー1塁になった」というプレーについて、
「0アウト・ランナーなし」の得点期待値が0.45で、「0アウト・ランナー1塁」の得点期待値が0.8なら、
このヒットには0.35点の価値があった、と考えられる。
4)
同じ「ヒット」「三振」でも局面によって価値が異なるので、今度はそれぞれのプレーごとに「価値の平均」を計算する。
最終的には「ヒットは平均0.4点」「三振は平均マイナス0.25点」といった1つの数値が定まる。

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あるプレーの得点価値がプラスだったら「得」で、マイナスだったら「損」です。
そして実際のプロ野球を対象に計算してみると、送りバントの得点価値はマイナスになります。
ランナーが先の塁に進むメリットよりも、アウトを増やすデメリットの方が大きい、ということが客観的に示されたのです。


というわけで、
統計的に分析した結果が「損」なんだから、誰が何と言おうと損だ!
みんな送りバントなんてやめて普通に打とう!






…………本当にそう断言していいのでしょうか?


1.2. 前提が変われば価値も変わる

改めて確認しますが、送りバントが「損」と見なされるのは、
・多数の試合をこなし、できるだけ多くの勝利を目指すプロ野球のシーズンで
・膨大な数のプレーを統計的に分析して「得点価値」を決める
という前提に基づいた話です。

例えばプロ野球であっても5〜7試合制の短期決戦とか、甲子園の決勝のように勝てば全てが決まる1試合を考える場合、この話は必ずしも当てはまりません。
また、「得点価値」は全てのプレーを平均したものなので、その中には「送りバントをして、その後に点が入った」成功例と「送りバントをしたけど点が入らなかった」失敗例が両方含まれています。

したがって、
「最終回、堅実に走者を進めたおかげで貴重な得点につながり、チームが優勝を飾った。送りバントを決めたA君の貢献は大きかった」
みたいな監督のコメントが否定されることはありません。
そもそもこれは統計の話ではなく、単に実際に起こった結果に対してのコメントですからね。


「同じ事柄であっても、どんな前提を考えるか、どういう視点で見るかによって結論が異なる」ことはよくありますが、送りバントもその好例の一つではないでしょうか。



2. 伊勢改二の使い方 〜19春E5-2甲ラスダンより〜
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お待たせしました、本題に入りましょう。

2.1. 連撃伊勢 vs. 制空伊勢

ちょっと前の話になりますが…
春イベのE5 (最終海域) を甲でクリアした提督さん、第2ゲージ最終形態(ラスダン)はどのような編成で挑んだか覚えていますか?
(甲以外の方も、この機会に過去の編成を振り返ってみてください)

私はこんな感じでした。
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この戦いの主役は長門・陸奥・ネルソンとアメリカ組でしたが、本記事で注目するのは主力戦艦以外の第1艦隊メンバーです。
攻略中に他の提督の突破編成を検索して収集・観察したところ、大まかに

① 伊勢(または航巡)に主砲2+水偵を積み、連撃させる
② 伊勢(または航巡)に艦戦・水戦をできるだけ多く積み、制空に専念させる

の2パターンに分けられることがわかりました。

①の編成において伊勢や航巡に連撃をさせる最大の目的は、ボスへの割合ダメージを1回でも多く発生させることです。
何を持たせてもボスに対しては(ほとんど)割合ダメージにしかならないので、それなら単発砲撃よりも連撃で手数を増やしたい、という意図があります。
ただし主砲や水偵を積む分だけ艦戦・水戦の数が少なくなるため、空母にも艦戦を積んで制空力を確保しなければなりません。

②の編成では (上の画像のように) 空母に艦爆と艦攻だけを積み、攻撃の威力を最大限に高めることもできます。

簡単にまとめると、①の編成は「手数が多いが一撃の火力は低い」、②の編成は「一撃の火力が高いが手数は少ない」となります。


さて、ここで問題です。
①の編成と②の編成について「一方は得で、一方は損である」と客観的に判断することは可能でしょうか?

……

いろいろな考え方があると思います。
私は「おそらく可能だが、現実的ではない」と答えます。

その理由を簡潔に述べると、
「ラスダンは1回でもボスを倒せば終了するが、客観的な基準を得るには膨大な戦闘回数(=時間)が必要だから」
です。

「もしイベント海域が『ラスダンで150回の戦闘を行い、ボスを一定回数以上撃破したら勝利』というルールなら判断基準は明確になるが、実際にはそういうルールではないから」
という言い方もできます。


2.2. 勝利提督インタビュー

イベント海域のラスダンは、明らかに短期決戦であり決勝戦です。
そして、①の編成を採用した提督が
「伊勢の連撃がうまくボスに当たったおかげで、ギリギリ夜戦で止めを刺せた。伊勢の貢献は大きかった」
とコメントするのも全然おかしくない…というか、普通によくあることです。

一方、私は②の編成で勝ち、編成画像をTwitterに投稿したりしているわけですが、どちらの提督も勝ってから振り返っているところがポイントです。
どちらか一方が「損をする編成」の可能性は否定できませんが、「実際に勝った編成」として見ればどちらも全く対等であり、ラスダンで「損をしない編成」の追求に時間を費やすのは悪手といえます。
(「損をしない編成」の追求が役に立つのは、同じ相手と多数の戦闘をする場合……そう、掘り周回です)

組むべきは「勝てる編成」であり、勝つための筋道さえ通っているなら何でもいいのです。
では、ラスダンという名の決勝戦で「勝てる編成」を組むためには、何が必要なのでしょうか。

前半の野球談義を念頭に置いて監督風に答えるならば、「戦力の見極め」と「決断」でしょう。
起用する艦娘の役割を自分の中でしっかり把握し、狙い通りの働きができるように装備や並び順を決め、一度作った編成は変える根拠が見つからない限り変えない。

もうひとつ忘れてはいけないのが「観察」。
他の人の「勝った編成」には、見極めや決断のヒントが多く含まれています。これを活用しない手はありません。
また、編成におかしなところがあれば、それは戦闘の中に必ず現れます。沼の兆候はくれぐれも見逃さないようにしましょう。

ありがたいことに、ラスダンは勝つまで (時間と資源の続く限り) 何度でも戦える決勝戦です。
勝つまで挑み続ける「執念」も結構大事かもしれません。



3. おわりに

春イベ期間中、某所における攻略談義で「ラスダンの連撃伊勢は無駄ではないか」との主張を見て、「そうとも言い切れないのでは」と送りバントで例えながら説明する……という出来事がありました。
当時の私の発言をベースに書いたのが本記事です。

自分の中で「イベント開幕直前に1本書く」のが一種のルーティンと化していますが、今回は上記の経緯もあって、初めて甲作戦を題材とする記事になりました。
初めて挑む方への応援記事を何度か作っていたら、さすがに書くことが無くなってきたところもあります

「送りバント」は野球を知らない人には恐らく全然通じないので、例えとしてはあまり良くないかもしれません。
ただ、毎回イベント海域を楽しんでいる提督には、このようにゲームに対して独自の捉え方を持っている人が多いと感じます。
そういうものは攻略中の言動にも表れてきますし、それを眺めるのもまた楽しいのです。
(例えば赤りんご先生とか)

まあ、わざわざブログに書く人となると滅多にいませんが…。
記事を作るのは思考を整理することにもつながりますし、皆さんもっと書いてもいいんですよ?


“本年最大規模”のイベント開幕まで残りわずか。
しっかり準備して、作戦を成功に導きましょう。
提督の皆様の健闘を祈ります。